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CAREER STORIES 4

ジャガー・ランドローバー横浜港北
(株式会社ネクステージ)
ワークショップ・コントローラー

藤嶋 宏悦

2019年 EVERYDAY LEGEND
日本大会優勝 テクニシャン オブザイヤー
Global Technician of The Year 2019 国際大会日本代表

<PROFILE>

自動車整備専門学校を卒業後、国内メーカーのディーラーを経て、大好きだったディスカバリーを触ることを夢に当時のローバージャパ ン直営ディーラーに転職。転職2年目にはテクニシャンオブザイヤーコンテストで日本3位に、その後も、日本2位、日本1位を2回、と今に至るまで20年以上トップクラスのテクニシャンとして走り続けている。今は、とにかく人を育てることに注力しているそうだ。

ローバージャパンへの転職
アウトドアが趣味で、ディスカバリーに憧れていた。そんな時にローバージャパンの募集をみて即転職。 1996年10月
テクニシャンとして自信がつき始める(転職2年目~6年目)
転職2年目にテクニシャンオブザイヤー日本3位
2002年が2位、2010年1位
2013年 ジャガー・ランドローバー横浜港北へ転職
トップテクニシャンとして(7年~13年)
2018年運営法人が(株)ネクステージに変更
9年ぶりの大会出場で再び優勝
今は人を育てることを使命にしている。

ランドローバーの理念と合致した自分の想い

2019年 テクニシャン オブザイヤー優勝 日本一のテクニシャンとなった藤嶋さん。しかし、驚くことに大会での受賞はこれが初めてではないということ。1998年にテクニシャンオブザイヤー 3 位を獲得。2002年に日本で 2 位、2010年には日本で 1 位、そして2019年に再び日本一になるのである。20年の間で、出場した 5 大会中 4 大会で 3 位以内、そして優勝が 2 回という快挙をとげている。そんな藤嶋さんは、もともとスキーやキャンプ、オフロードを走ったりするアウトドアが趣味。そんな趣味だからこそ、ランドローバーのディスカバリーが、好きで、好きでしょうが無かったそうだ。ディスカバリーを偏愛していたからこそ、ローバージャパンの募集を見て、即決で転職をきめたのが 96年のことだった。 「他人に負けないものというのは、技術もそうですが、ランドローバーに対する気持、思い入れは誰にも負けないと言えると思っています。SUVだけを70年以上もつくってきたランドローバーというメーカーが大好きですね。今流行っている小さい車に比べると不自由ですよね、大きいし。でも、[ このクルマだったらどこにでも行ける ] というのがランドローバーの当初の理念でした。本当にどこにでもいける、そこが砂地だろうが荒れ地だろうが砂漠だろうが泥だらけだろうが、乗った人を安全に運ぶことができるというのがランドローバーでしたので、そういう理念をもった車が大好きでした。」

トライ&エラーの毎日から生まれた信用

最初にローバージャパンで担当したのは主に乗用車。当時リコールなどもあり、来る日も来る日も、朝から夜遅くまでエンジンの分解・組み立て作業に追われていた。しかし、このがむしゃらな一年間が、様々な技術と知識を高めたのは間違いの無い事実だ。同時に、藤嶋さんの中に確かな自信が生まれた時でもある。
「世田谷サービスセンターに入った時は忙しい時期で、ミニでしたら月間 50~60 台は売れていた時代です。車がいっぱい売れるとトラブルも増える、そのトラブルを解決するのに、まだ入ったばっかりでしたけどトライ&エラーでやっていました。一年間がんばって、トレーニングに行ったり勉強もしました。そうしたら、その翌年のテクニシャンオブザイヤーになれたんです。コンテストに出てその時は日本で 3 位。そのあたりからですね、自分の仕事に自信がもててきたのは。他の人からも信頼されて相談されたり、本社のテクニカルサポートの人達とも密に情報交換ができるようになりました。」

経験に頼らない情報収集と判断

藤嶋さんが車を整備する際には、トップテクニシャンならではの経験を元にトラブルに対処しているのかと思ったら、意外にもあえて自身の経験には頼らないようにしているという答えが返ってきた。ぎりぎりまで自分の経験から答えを出すのを抑え、様々な情報を分析した上で冷静に判断していくことが正しい原因究明になるという。 「トラブルシュートに関して言えば、とにかくあらゆる情報を収集するということですね。お客様からの問診もそうですけれども、もうちょっと掘り下げて聴かなければいけないところを聴く。クルマの状態を的確に素早く判断するというのが一番重要です。もちろん経験からくるものはあるのですが、逆に経験には頼らないようにしています。結構長いこと何十年もやっているので、同じ症状で違う原因っていうのを、そういう症例をいっぱいもっているんですよ。それが長くやっている人のダメなところなんですけど、症例をいっぱい持ちすぎて絞れないんです。2 つ 3 つ位ならいいんですけど、同じエンストでも 10 個とか 20 個とか症例をもっているので。経験に頼らず手に入れた情報を確認していくというのは大事にしていますね。」「今の車の整備に関して言うと、目でみてわかる故障というのが少なくなってきているのは確かで、ほぼ電気的なトラブルです。電気ですと目に見えないので、そこを探っていくのは非常に難しいと思いますね。いま電気が来ているか来ていないかという単純なモノではなくて、もう本当に電気信号になっているので、波形を見たりその波形が合っている波形なのかというところまで見なければいけない。そういったことを知識としていっぱいもっておかないと、なかなか判断ができなくなってきているのは確かだと思います。」トップテクニシャンとして走り続けるには、次々に出てくる新しい車の新しいシステムに関する知識を常にアップデートさせていくという大変な作業がある。新しいシステムには、経験値よりも新しい知識を優先させるということなのだろう。

いま必要なのは、人を育てること。

ディーラーである限り、旧い車も新しい車も修理に入ってくる。旧い車にはコンピュータこそ無いが、それを修理するのには英国車独特の知識がいる。現在の様に、高度な電子デバイスが無かった時代からテクニシャンを続けている藤嶋さんは、新旧両方の車に対処出来る。しかし業界全体を見渡せば、オールマイティに対処できる人はまだまだ足りないそうだ。だからこそ、人を育てることが重要だと藤嶋さんは言う。


「私自身が自分に課しているのは、人を育てるということですね。テクニシャンだけでなく、アドバイザーでもセールスでも全体を押し上げていきたい。そして、その中に一人でもジャガーとかランドローバーに興味をもって仕事をしてくれる人を増やす。一時期ネットワークの再編でジャガー・ランドローバーのディーラーが減った時がありまして、その時に出来る人もこの業界からいなくなってしまった。昔のことを知っている人や、優秀だった人もいなくなってしまった。だから出来る人を育てていきたいと思っています。」

皆が同じ気持ちになれれば、もっと広がる

車を取り巻くイギリスの文化やブランドの歴史などを知ることは、ファンを広めたり絆を強くする事ができる事を藤嶋さんは肌で感じている。
「1 週間に 1 回だけ、日曜日の朝礼の時に私が軽い話をします。例えばイギリスの文化についてとか、ランドローバーの話やレンジローバーのヒストリーなど簡単に 5 分くらい話をしています。直接クルマの話ではなくても、それを取り巻く世界や魅力の話をします。店のスタッフを通して少しでもお客様の車の購入や整備の入庫に繋がればいいかなと思って話をしています。」
「自分が色んな人に言ってることは、ジャガーやランドローバーに興味をもって、好きでいてください。それにつきると思います。好きであれば向上心とか、こうしてあげたい、ああしたいという気持が出てくると思います。自分が取り扱ってる車両に対して愛情がないと。それはどんな職種も一緒だと思います。」